モロッコはアフリカ北西端に位置し北東から南西に斜めにアトラス山脈が走り、北西部は地中海、大西洋に面し温暖な気候であるが南東部は雨の少ない厳しい砂漠地帯である。歴史的には古代ローマ帝国の属州を経て、8世紀初頭からアラブ勢力により征服され、ベルベル、イスラム、アフリカ、ヨーロッパといったさまざまな文化が融合した特異な国家である。1912~56年にはフランスの保護領とされたが、現国王の祖父ムハンマド5世の時代に独立し、現在に続くアラウィー王朝を復興させた立憲君主国である。現国王ムハンマド6世の時代に民主化が一気に進んだ。特に一般庶民のコンピュータ技術者のマルサ妃を迎えてからは、それまではイスラム社会にあっては女性は”影の存在”あったが、王妃の名前が公表されたのも、結婚式が公開されたのも、妃の顔が公にされたのもマルサ妃が最初である。マルサ妃はまた美しすぎる王妃として華やかさをもって国際社会で活躍されている。政情不安なイスラム諸国のなかでも比較的安定しているのは進歩的な君主のもとで民主化が進んだことも影響していると思われる。昨年モロッコを訪れ、白の街カサブランカ、赤の街マラケシュ、青の街シャウエン、古都フェズなど観光したが一番の圧巻はサハラ砂漠であった。午前3時に四輪駆動ジープでエルフードのホテルを出発。砂漠の入口メルズーカまでぶっ飛ばし、夜明けの1時間位前に到着。満月の砂漠をラクダ組と徒歩組に分かれて砂漠に分け入る。徒歩組は懐中電灯で足元を照らし、くるぶしまで砂に埋もれながら慣れない砂地をガイドに遅れながらも暗闇を必死に歩いた。40分位歩くと小高い砂丘に着く。ラクダ組は既に到着して小休止を取っている。やっぱりラクダは楽だ。やがて月は地平線に沈み、しばらくすると空が白ずんでくる。東の地平線に一瞬きらりと光る。日出である。見ている間に光は大きくなり太陽が現れる。周囲の砂丘の凹凸に陰影がうっすらとやがてくっきりと浮かぶ。今まで暗かった周囲が見えてこんなところに居たんだなと感動的である。感傷にふける間もなく太陽はぐんぐん昇る。気温が上がる前にラクダ組はラクダに乗り、徒歩組は裸足になって砂丘の感触を直に感じながらの帰路となる。往路に比べ帰路は明るいので砂の上の狐の足跡やふんころがしの足跡などをガイドに教えてもらいながらゆっくりと砂漠を楽しんだ。サハラ砂漠の夜明け前の出発から明けた後の砂丘の風景をお楽しみください。